ロスチャイルド・バードとバラのブーケ

こんにちは。リビングフォトの今道しげみです。

フォトジェニックなスタイリングは、「物語」や「歴史」が感じられるように設計しています。4月のブーケドフォトの授業ではヘレンドのロスチャイルド・バードの食器を使ったスタイリングをご紹介しました。

4月はイースターなので卵を飾る事も多いのですが、飾り棚に長年しまい込んでいたロスチャイルドバードのコーヒーポットにふと目が留まり、「小鳥」をテーマにしてみました。

このコーヒーポットは、ロンドンのハロッズでみつけた蓋が欠けたセール品でした。「花を活けるのに良さそう」と思って買ったのが、私がうら若き20代。そのまま何十年も花を活けないままになっていました。このタイミングを逃すと、一生そのままになると危機を感じで引っ張り出しました。

セットで持っているわけではないし、お菓子を飾ると肝心の小鳥が見えなくなってしまうので、実際の「お茶会」で使う事はなく、時々コーヒーカップだけ使っていました。

30年以上も放置していたわけですが、探してみると、お皿が更に2枚出て来て、得した気分。ハンドルの部分が、可憐な「つるバラのつぼみ」になっています。ポットの注ぎ口のデザインも切り株や年輪のナチュラルなデザインなのも気に入っています。

Rothschild Oiseaux Helend 1860

ハンガリーの窯元、ヘレンドは1851年に世界で初めて開催されたロンドンでの万国博覧会に出展します。イギリスのヴィクトリア朝の栄華を象徴する祭典としてハイドパークに「水晶宮 クリスタルパレス」と呼ばれるパビリオンが作られました。(現在は消失)蝶と花が描かれたシノワズリー柄をヴィクトリア女王が気に入り、英国王室に納品されます。Helndの名を一躍有名にした、このシリーズは「Victoria」という名前で今でも人気で作られています。
ロンドン万博の成功に刺激を受けた、フランス第二帝政のナポレオン3世は1885年にパリ万博を開き、その時に造られたのがエッフェル塔なのは有名です。後でお話するボルドーの1級格付けもその年に行われました。

かなり余談ですが、カメラと写真の歴史も万博への出展を見ると知ることができます。この話をクラスでした時に、生徒の一人が「曾祖父がパリ万博(1867年)に行ってカメラを持ち帰り、家族の写真を残してくれた」とおっしゃるので、根堀葉ほり聞いてみると、「ナポレオン3世にも謁見した」「あなたは誰?」と大いに盛り上がりました。
日本におけるカメラの歴史についての取材を兼ねて、ブーケドフォトのスピンオフ企画として、その写真を見に行こうと計画中です。

ロンドン万博での評判を聞きつけた、大富豪ロスチャイルドのウイーン家が1860年に小鳥が2羽と金のネックレスが描かれた食器を注文します。ロスチャイルド卿夫人がなくしたネックレスにいたずらしている小鳥を庭師が見つけたというエピソードをモチーフにしたと伝えられています。鳥は富の象徴で、18世紀に広くヨーロッパで用いられた「異郷の鳥」のモチーフの中で最も洗練されたデザインとされています。ロスチャイルド・バードは柄違いが12種類もあるのが見ていて楽しい。

ロスチャイルド家の情報戦略イノベーション

ロスチャイルドの名前は、食器やワインをはじめヨーロッパを旅行していると色々なところで遭遇します。大富豪といえば王侯貴族がや宗教絡みがほとんどですが、ロスチャイルドは中世にいち早く「国際情報ネットワーク」を構築して富を築いた歴史が面白い。

「ロスチャイルド家 ユダヤ国際財閥の興亡」横山三四郎著など数冊を読んでみました。
ロスチャイルドの名前は「赤い盾」という意味です。

「200年を超えるその歴史は、まるでおとぎ話のように父と5人の息子の物語から始まった。」

オーストリア・ハプスブルグ家の金庫番として巨万の富を築いた父マイヤーは死に臨んで、5人の息子が束ねた5本の矢のように決して離れる事無く、力を合わせて家業を発展させるように言い残した。そして5人の息子たちは、フランクフルト、ロンドン、パリ、ウイーン、ナポリの主要都市に放たれた。

今ではグローバル企業が、各国に駐在員事務所を置くのは当たり前の時代ですが、ヨーロッパとは言え言葉も文化も違う国に5人兄弟を行かせたのです。

ユダヤの一部の地域でしか使われていなかった特殊な言語をアレンジした暗号文を使って情報漏洩を防ぎ、人や馬を走らせ、伝書鳩を使って情報伝達のスピードを上げ、徹底した秘密保持で、国際情報ネットワークを築きました。

ロンドンからナポリへ情報を伝達するのに9日半かかっていたのを、ロスチャイルド家は7日で伝えたと言われています。外交官の情報よりもロスチャイルド家の方が迅速かつ正確で、政治をも動かす様になります。

フランスとイギリスのワーテルローの戦いで、フランスのナポレオン軍の敗北をロンドンで最も早く情報を得て、ロスチャイルド家が株や為替、貿易で大儲けしたというのは有名な話です。

イギリスが勝てば、イギリス経済が好転するので株価や物価は上昇します。ロスチャイルド家はロンドンでイギリス勝利の情報を得たにも関わらず「負けた」と見せかけて、株を手放します。ロンドンではロスチャイルドの動きが注目れているので、「イギリスが敗北した」と思い込んだ投資家たちが、慌てて安値で株を手放します。「イギリス軍勝利」の一般情報が入る一瞬前に、ロスチャイルドは安値の株を一気に買い戻して、大儲けをしたのです。

巨額の資金はスエズ運河の建設や、ツタンカーメンの発掘にも使われたとされています。

ヨーロッパでの、ロシアによるユダヤ人迫害の手を緩めるために、日露戦争時に日本軍に英国の戦艦を買う資金貸付も行なわれました。

ロスチャイルドのワイン

ワインをお好きな方はよくご存じだと思いますが、赤ワインの最高峰とも位置付けられるボルドー5大シャトーのうち、二つの銘柄がロスチャイルド家のものです。

正面中央のMouton Rotheschildは日本語では「ムートン・ロートシルト」と呼ばれるので、気付きにくいのですが、ロスチャイルドのドイツ語読みです。ロスチャイルドは5カ国5つの系譜に分かれていますが、ロンドン家が経営しています。毎年エチケットの絵が変わるのも注目されていますが、1973年にボルドーの1級格付けが118年ぶりに見直されて、唯一格上げされたのを記念してピカソの絵が使われました。1979年に日本人としては今のところ唯一、堂本尚郎氏の絵が採用されています。ムートン・ロートシルトのワイナリーは予約すれば見学や試飲もしっかりさせてもらえるので、旅行で訪れるのもお薦めです。私は飲酒運転を避けるために現地で自転車を借りて、ホテルからこいで行ったのですが、ツアーの日本人観光客から二度見されました。

写真の2014年はイギリスのロバート・ホックニーによるもので、代表作の「スイミング・プール」は2018年に102億円で落札されました。エチケットから現代アートの流行りを知る事も出来ます。偉大なワインは長期熟成が必要なので、保存状態と飲み頃の見極めが難しいのですが、セラーで長く持っているのも楽しみです。

もう一つの、ボルドー5大シャトーの「シャトー ラフィット ロートシルト」(写真左)は、パリ家が所有しています。ワインは土壌によって味がほぼ決まるとされていて、パリ万博が開催された1855年のボルドー格付けで1級を得たラフィットは、5大シャトーの中でも筆頭格です。

この2つのワイナリーはボルドーのポイヤック村にあって、自転車で行き来が出来る距離にあります。実際に行ってみると、この二つの偉大なワイナリーの間に、2~3級格付けの畑も隣接していて、近くに流れる川までの距離や、傾斜の角度や向き、地質の違いでブドウの味がこんなに変わるものかと驚きます。

写真右は、アメリカのナパバレーの「オーパス・ワン」で、ロスチャイルドと、アメリカを代表するワイン・メーカーのロバート・モンダビが最高のワインを造るために手を結んだものです。専門家の間では近隣のイングルヌックがナパ最高のテロワールと言われていますが、オーパスワンは醸造・熟成の時に温度管理がしやすいように、巨大な円形の「土塁」が築かれていたのが印象的でした。ここも予約をすると見学と試飲ができます。

香りのバラのブーケ

ロスチャイルドバードはティーセットとしては珍しく茶色やカーキ色といった渋めのアースカラーなので、どんな花を活けても会うのですが、せっかくなので花も「渋め」の色合わせにしてみました。
仕入れごとに少しずつですがバリエーションを変化させていますが、バラの基本の3種類と4~5月に旬をスノーボールは共通です。

オンライン配信をしなかった4月21日分の花材はこちらです。
☆スプレーローズ フェアビアンカ(増田バラ園)強いミルラの香り 
☆スプレーローズ ロゼドリュヌ(増田バラ園) 強いミルラの香り
☆ローズ  テナチュール(前橋荒砥)  最強!
☆スカビオサ(小山園芸) ボールの様に丸く咲きます。
☆アルストロメリア チェリーブロッサム(原種系 三宅園芸)好き過ぎて毎月入れたい
☆アンブレラ ファーン
☆キイチゴ ベビーハンズ
☆タラピス オファリム(ナズナでいいのに・・・覚えるのが大変! おしゃれペンペン草)

フェアビアンカは薄いクリーム色ですが、ロゼドリュヌはほんのりピンクがかっているので、濃いくすみピンクと色が綺麗につながります。

テナチュールに加えて堀木さんのバラ「アフタマス」と「ラストナイト・オン・アース」も使ったクラスも。

お約束のフラットレイズ。
お花とフォトレッスンをできたことに感謝です。